多肉植物に限らず、植物を育てていると冬場の管理が結構大変だと感じます。耐寒性が高くそのまま野外で越冬できる植物ばかりならば良いのですが、冬は室内に入れなければならない植物も多々あり、特に多肉植物の多くは暖かい地方が原産国のため日本の冬が苦手な品種がたくさんあります。
ここでは冬を野外で乗り切れるかどうかを実際にテストしてみた結果をご紹介します。
耐寒性テストをしようと思った理由
植物を育てるにあたり、耐寒性と耐暑性は結構管理に注意を必要とする項目ですよね。冷房や暖房を完備したハウスや大きな室内スペースがない限り、夏や冬をどう乗り切るか頭を悩ませます。
夏は気温よりも直射日光と湿度が問題になるので、野外の風通しの良い日陰に移動させるか遮光ネットなどで直射日光を遮れば良いのですが、冬の寒さは場所移動などでの簡便な方法ではなかなか乗り切ることは出来ません。
冬季の管理では暖かくなるまで室内やハウスに入れておく方法が最も一般的なのですが、鉢の数が多くなってくると室内に入りきらない場合も出てきます。簡便なビニール温室などの利用も効果的ですが、大きさによって数千円から数万円ほどの費用が掛かってしまいます。
そうなると、野外管理でも冬を乗り越えられるだけの耐寒性を持った植物はそのまま管理、冬を乗り越えられない植物は室内やハウスに退避させるというのが、最も効果的で現実的ではないでしょうか?
多肉植物に付いて書かれている多くのサイトを見ると、わりと耐寒性のある品種では「マイナス1~2℃なら耐えられる」「マイナス5℃まで大丈夫」「霜にあてても大丈夫」といった情報を得ることが出来ます。もちろん、ほとんどの多肉植物はアフリカや中米などの比較的暖かい地方原産なので寒さに弱い品種が多いとは思いますが、そんな中での「マイナス1~2℃」って、結構重要なのかなと感じています。
当方が住んでいる地域は北関東の平野部であるため、冬の寒さは割と緩やかな部類に入ると思います。言い換えれば、「この辺では野外での越冬ぎりぎりセーフな多肉植物が多いかも?」という淡い期待(笑)が首をもたげてきてしまうのです。
「ならば実際に冬も野外に置いてみよう!」ということで、実際に実証試験をやってみました。
耐寒性試験の実施(2020年)
試験を行ったのは2019年~2020年にかけての冬です。この年は暖冬といわれ、外の水道もシーズンを通して数回凍結した程度でした。また。凍結した水道もほとんどの場合にが当たるころには出るようになっていました。
霜は頻繁に降りていましたが、鉢を置いた場所は広めの軒下のため、直接の霜被害は無かったと思われます。
水遣りはシーズン中に2~3回程度行った程度です。
試験に使用した植物
今回の耐寒性試験には多肉植物の他にも何種類かの植物を使用しました。今回使用した植物は以下の12品種です。多肉植物が8品種で他が4品種ですね。
- エケベリア属 錦晃星
- オトンナ属 ルビーネックレス
- セネシオ属 ピーチネックレス
- クラッスラ属 紅稚児
- セダム属 ミルキーウエイ
- カランコエ属 胡蝶の舞
- セダム属 丸葉万年草斑入
- クラッスラ属 金のなる木(花月)
- オリヅルラン属 オリヅルラン
- オオアマナ属 コモチラン(オーニソガラム コーダツム)
- サボテン 白檀
- アロエ
試験を行ったシーズンの気温
耐寒試験を行ったのは2019年12月中旬頃~2020年3月上旬頃で、その時の気温が下の表です。2月上旬は寒かったものの、他は結構暖かかったのかもしれませんね。
結論から言って、2月上旬にあった最低気温「-4.9℃」が来るまでは、ほとんどの植物は耐えていましたが、この最低気温で一気にダメージを負った感じがします。次に個々の植物について結果を書かせていただきます。
結果
個々の植物についての結果です。
エケベリア属 錦晃星
2月上旬の「-4.9℃」までは耐えていましたが、この日の朝に見てみると葉がキラキラと輝いていました。暫くして日光が当たり少し暖かくなると葉がブヨブヨになって垂れ下がってしまいました。きっと凍っていたのでしょう。
数日間様子を見ましたが、緑だった葉は黄色く変色し、ちょっと触った程度で脱落してしまいました。そのまま置いておいても復活しそうになかったため、残念ながら処分しました。
次の写真はダメージを受けて2週間ほど経過した錦晃星です。この葉は触るとすぐに脱落してしまいました。
オトンナ属 ルビーネックレス
-4.9℃の後、ルビーネックレスも大きなダメージを受けました。ただし錦晃星のように株全てにダメージを受けたというより、垂れ下がった部分や大きな葉に大きなダメージを受け、葉が紫がかった茶褐色に変色してしまいました。
培養土に直接根を張っている部分はかろうじて生き残っているようでした。ダメージの大きかった垂れ下がっている部分の葉は、後日全て脱落してしまいました。
その後気温の上場と共に生育を開始し、絶えることなく無事に生き残ってくれました!
セネシオ属 ピーチネックレス
ピーチネックレスもルビーネックレスと同様に、垂れ下がった部分7に大きなダメージを受けました。しかし、ルビーネックレスよりも生き残った葉が多くあり若干ですが耐寒性は強いのではと思います。
クラッスラ属 紅稚児
紅稚児は全体的にダメージを受けた感じがします。元々細かな葉がたくさんあるタイプの多肉植物ですが、全体的に葉が軟弱化して脱落しやすくなってしまいました。ただし、培養土に根を伸ばしているような場所の葉は何とか生き残っているようです。
紅稚児はあまり手持ちの株が無かったため、この後は室内で管理しました。その後は無事に生き残ったところから増えて行き、絶えることなく今は元気に育っています。
セダム属 ミルキーウエイ
ミルキーウエイは若干のダメージを受けたものの、おおむね乗り越えたように思います。ルビーネックレスやピーチネックレスのように、垂れ下がった部分も枯れることなく、多少の葉は脱落しましたが元気に育っています。
カランコエ属 胡蝶の舞
2月上旬の-4.9℃まだ下がった朝、見たところしっかりと立っていたので「乗り越えたか!」と一瞬安堵しました。しかし日光が当たると途中から折れるように倒れてしまいました。葉を触ってみると水分を含んでブヨブヨとした状態でした。
しっかりと立っていたように見えたのは、胡蝶の舞が凍りついていたのですね。。。
数日後には緑が残っていた葉も茶褐色に変色してしまい、そのまま死滅してしまいました。
セダム属 丸葉万年草斑入
丸葉万年草斑入は全体的にダメージを受け、軟弱化してしまった葉も結構ありましたが、全体的には7割ほどの部分が生き残ったように思います。
クラッスラ属 金のなる木(花月)
12月下旬頃には全ての葉が脱落してしまいました。
オリヅルラン属 オリヅルラン
オリヅルランは葉の多くが枯れてしまいました。3月になって枯れた部分の葉をカットしてそのまま様子を見ていたのですが、新しい葉も出てきて現在では元気に育っています。根が生きていれば春になって新芽が芽吹いてくれるのですね。
オオアマナ属 コモチラン(オーニソガラム コーダツム)
コモチランも葉のほとんどが枯れてしまいました。オリヅルランと同様に葉をカットして様子を見ていたのですが、4月には新しい葉も出てきてさらには花芽も持つようになりました。思っていた以上に寒さに強いのかもしれません。
サボテン 白檀
白檀は強い品種なので冬季も野外で大丈夫!という情報は得ていましたが、実際に野外で冬を越したことはありませんでした。
冬の間は全体的に赤っぽく変色していましたが(いわゆるストレス色)、特に枯れるとか軟弱化するとかという変化はありませんでした。
ストレス色は5月上旬になっても抜けませんでしたが、結果的に冬季も野外で問題ないという事が確認できました。さらに、冬季間を室内で管理していた白檀に比べ、花付きが数週間ほど早く、また花数も多かったという嬉しい誤算もありました!
アロエ
アロエは2品種をテストしてみました。不夜城という品種と、多分アロエ・ベラと思われる品種です。2つとも葉の先端部分にダメージを受け、その部分が枯れてしまいましたが個体としては冬を乗り越えることが出来ました。
ただ、見た目が痛々しい感じがするので、来年は室内に入れてあげようかと思います。
耐寒性テストのまとめ
耐寒性のテストをやってみましたが、テストに使用した多くの多肉植物は氷点下1℃前後までは問題なく耐えることが分かりました。しかし、氷点下5℃近くまで気温が下がると、かなりのダメージを受けてしまう事もわかりました。
いつ激しい寒波が来るかは全く予想も出来ないので、氷点下5℃でも問題の無かった品種以外は室内管理がベターだと思います。ただし、寒くなったので慌てて室内に入れないでも(当方の環境では)年内を目安に入れてあげればよいことも分かりました。
次のシーズンも別の品種を試せればと思っています。
冬季も野外で大丈夫な品種
- セダム属 ミルキーウエイ
- サボテン 白檀
できれば室内に入れてあげたい品種
- オトンナ属 ルビーネックレス
- セネシオ属 ピーチネックレス
- クラッスラ属 紅稚児
- セダム属 丸葉万年草斑入
- オリヅルラン属 オリヅルラン
- オオアマナ属 コモチラン(オーニソガラム コーダツム)
- アロエ
冬季の野外は不可な品種
- エケベリア属 錦晃星
- カランコエ属 胡蝶の舞
- クラッスラ属 金のなる木(花月)
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