芙蓉(フヨウ)の挿し木をやってみました!

フヨウの挿し木2020トップイメージ

夏を代表する花木として室町時代から観賞されてきた芙蓉は、夏から秋にかけて美しいピンクや白の花を咲かせます。芙蓉は一日花、つまり朝に開花して夕方には萎んでしまいますが、最盛期には次々と花を咲かせるため長く楽しむことが出来ます。

今回はとある理由から芙蓉の挿し木をやってみたのでご紹介します。

芙蓉という植物について

芙蓉についての基本的な内容をまとめてみました。

芙蓉の基本情報

科名/属名 アオイ科フヨウ属
名称 芙蓉(フヨウ)
原産国 日本、台湾、中国など
形態 低木
分布 日本では沖縄、九州、四国に自生する
開花時期 7月~10月
増やし方 種まき:秋に出来た種を採取して翌年5月頃に撒く
挿し木:詳細は「芙蓉の挿し木について」を参照
備考 芙蓉は半耐寒性(寒さにやや弱い)の樹木で、関東以西では地植えでも栽培可能ですが、北部の寒い地方では鉢植えまたは、地植えであっても冬期は寒さ対策を施す必要があります。

芙蓉はその美しい花と1日で枯れてしまうことから、花ことばは「繊細な美」「しとやかな恋人」と付けられ、美人の代名詞のように使われたりしています。

そして芙蓉は花だけではなく、その種鞘も「枯れ芙蓉」として愛されてきました。枯れてもなを人を魅了するって素敵ですよね!!

枯れ芙蓉。芙蓉の種。
枯れ芙蓉。2018年12月撮影。

芙蓉の日当たりと用土について

芙蓉は日当たりが良くてやや湿り気の有る環境を好みます。日当たりが悪いと花付きも悪くなりますので、地植えでは日当たりも考慮した場所に植え付けましょう。鉢植えの場合は最悪鉢ごと移動させることも可能ですが、芙蓉は3~4mの大きな木になりますので10号鉢(直径30㎝)以上の鉢になりますので、最初の置き場所もきちんと考えておいた方が良いと思います。

水はけが良ければ特に土質は問いませんが、乾燥(特に夏場)に弱い性質を持っていますので水持ちの良い土質の物が良いでしょう。例えば赤玉土6:腐葉土4の配合で培養土を調整します。

地植えの場合、土質が粘土質のように水はけが悪い場合は、有機たい肥などを混ぜ込んで保水力はあるけれど地表に水がいつまでも溜まっていない状態を作ってあげましょう!

植え付けや植え替えは3月~5月が適期になります。

芙蓉の剪定について

芙蓉の花芽は今年伸びた新しい枝に形成されます。そのため剪定は落葉期の11月~2月頃(遅くとも3月頃)までに行います。選定は暖かい地方と寒い地方ではその方法も異なるものとなります。

暖かい地方の剪定

冬場でも枝が枯れないような地方では込み入った枝を整理するような感じで選定します。また樹形が大きくなりすぎたような場合は、コンパクトにまとめるように樹形を見ながら不要な枝を落としていきましょう。

芙蓉は春に新しく伸びた枝に花を咲かせますので、年々花が樹の上の方に咲くようになってしまいます。そのため太い枝などは短く切り詰めて花が咲く位置を目線の高さに合わせた方が綺麗に見えます。

寒い地方の剪定

寒い地方では冬期になると枝が枯れてしまい、手でポキポキと折れるような感じになります。このような地方の場合は地際から15~20㎝程のところで枝を全て切ってしまいます。こうすることで翌春に新しい枝が伸びてくるようになります。

また、寒さで根が枯れてしまわないように落ち葉や藁などで根元を覆い防寒対策を施します。

芙蓉の挿し木について

芙蓉は挿し木での発根率も良くおよそ1ヵ月で発根が見られます。挿し木の方法は大きく分けて2通りの方法がありますので、お住まいの環境や挿し木をしようかなぁ~って思った時期(笑)で選んでも良いのではないでしょうか。

前年枝を保管して刺し穂にする

特に寒冷地で冬季に枝が枯れてしまうような場合に有効な方法です。今年伸びた枝を枯れてしまう前の11月頃に15~20㎝の長さに切ります。切った枝は湿らせた砂に埋めておくか、ビニール袋に入れて土の中に埋めておきます。

翌春暖かさを感じれれるようになった2月頃に掘りだして刺し穂にします。

新芽を刺し穂にする

冬季間でも地上部が残るような地域では新芽が出始める3月~4月に枝(これは前年育った枝になります)を切って刺し穂にします。暖かい地方ではこの枝から新芽が出始めますので昨年枝から発根させて、そこから伸びる新芽を育てていくといった方法です。

また、強剪定などをして昨年枝を切ってしまった場合とか、挿し木のタイミングを逸してしまった場合などでは、新梢が固くなる前の5月~6月頃にこの新梢を刺し穂にすることも可能です。

さらに、暖かい地方では9月~10月頃に挿し木を行うこともできます。

挿し木のやり方

準備した刺し穂を使った挿し木の実際の方法については、私がやってみた挿し木の内容と共にご紹介したいと思いますので、下の方の記事をご覧ください!

芙蓉の病害虫について

芙蓉は病気にはあまり注意する必要はありませんが、春から秋までは害虫による被害に注意が必要です。

芙蓉を食害する害虫としては、ハマキムシ・アブラムシ・カイガラムシ・カミキリムシなどがあげられます。

うちの芙蓉にもハマキムシの被害はそこそこみられるのですが、アブラムシやカイガラムシはあまり見かけることはありません。ただ、新しい葉が出ると直ぐに何者かに食害されてしまい穴だらけにされてしまう事が結構多いです。ひどいときにはほぼ全ての葉が食べられてしまうようなことも・・・・。初めはその犯人が分かりませんでしたが、そのうち葉の上にいる何かの幼虫を発見!これが異常に沢山いるのですよ!

調べてみると「フタトガリアオイガ」という蛾の幼虫でした。この幼虫、名前の通りアオイ属の葉がお好みの様で、オクラなどの栽培農家さんでは結構苦労されているようです。

フタトガリアオイガってこんなやつ!

見るも無残に食害された葉が下の写真です・・・・
これはまだよい方で、本当にひどいときは葉が無くなるくらいの勢いで食べられてしまします(涙)。しかも贅沢な奴らで新しくできたみずみずしい葉からもしゃもしゃと食べてしまうので、花が全く咲かない年もありました。

フタトガリアオイガの幼虫に食害された芙蓉
フタトガリアオイガの幼虫に食害された芙蓉

この犯人のフタトガリアオイガの幼虫が下の写真なのですが、これは若い幼虫で体が緑色をしています。この写真位大きくなった幼虫は見つけやすいのですが、もっと若い幼虫は1㎝にも満たない小さな姿で、色はもう少し明るい緑色をしています。そのため、よ~く見ないと見過ごしてしまう事もあります。

フタトガリアオイガの若い幼虫
フタトガリアオイガの若い幼虫

次の写真が大きくなった幼虫です。この色になると一目で見つけられるため駆除しやすいのですが、ここまで大きくなるまでには結構な量の葉を食べていますので芙蓉にとっては被害が大きくなってしまいます。

ちなみに赤く見える方がお尻の方で、頭はその反対側になります。なんでもお尻を赤くすることで敵に頭と勘違いさせ、実際の頭部へのダメージを受けないようにしているとか。。。

フタトガリアオイガの幼虫
フタトガリアオイガの幼虫

この害虫は殺虫剤(薬剤)はあまり効かないようで、見つけ次第に取って捨てるしかないようです。体色が黄色と黒の威嚇色をしていますが、毒は無いので素手で触っても大丈夫です。とは言っても、やっぱり気持ち悪いのでビニール手袋で摘まんだり割りばしを使って駆除していました。

そうそう、この幼虫は葉の上面、つまり上から見える場所にいるので簡単に見つけることが出来ます。

フタトガリアオイガに有効な殺虫剤発見!

2020年8月9日追記

発見!なんていうと大げさなんですが(‘◇’)ゞ、フタトガリアオイガに有効な殺虫剤を見つけたので追記で報告です!

実は挿し木で植え付けた芙蓉がフタトガリアオイガの幼虫に結構食害されて困っていました。以前「ベニカXスプレー」という薬剤を使ったことが有るのですが、効果はありませんでした。そこで今回は「オルチオン乳剤」という薬剤を使ってみました。これはオルトラン(浸透移行性の殺虫剤)とスミチオン(殺虫剤)の混合薬剤なのですが、噴霧して数時間たってもフタトガリアオイガの幼虫は結構元気いっぱいでした。。。

そこで、意地になって家にある殺虫剤全部試してくれようと思い、定番のキンチョールを使ったところ・・・・速攻でフタトガリアオイガの幼虫の駆除が出来ました!
キンチョール恐るべし!(笑)。

ただ、植物にキンチョール使って大丈夫なのかと心配になって、事後確認ですが調べてみたところ、至近距離で噴霧するとスプレーの冷害で葉が枯れることがあるようです。30㎝以上離して使用すれば冷害は防げます。

そして、もちろんのことですが使用方法外の使い方なので自己責任ですし、農作物のような食品には使用しないようにしましょう!
芙蓉は園芸植物なので使ってみましたが、近くに野菜などを育てている場合は使用しない方が良いですね!

ハマキムシってこんなやつ!

次はハマキムシです。漢字で書くと「葉巻虫」というハマキ蛾の幼虫で、葉っぱを丸めたり2枚の葉っぱをくっつけたりして、その中に幼虫が隠れています。

次の写真がハマキムシが丸めた芙蓉の葉です。写真が横長なので丸めた葉っぱが水平になっていますが、実際は下に垂れ下がっています。

葉巻虫というだけあって器用に葉を丸めるもんだなぁって感心してしまいますが、やはり害虫は害虫、見つけ次第駆除したいところです。

ハマキムシが丸めた芙蓉の葉
ハマキムシが丸めた芙蓉の葉。実際は丸めた部分が下に垂れ下がっている。

ハマキムシの駆除方法は、丸めた葉を見つけたら葉ごと取ってしまうやり方が手っ取り早いです。殺虫剤(スミチオンなど)も効果はありますが、葉の中にいる幼虫に届くように散布するのは結構めんどくさいかもしれません。

ハマキムシの予防としては、オルトランのような浸透移行性の殺虫剤を使います。

ハマキムシが巻いた葉を広げてみると、本当に器用に巻いていることが分かります。
Aが上の写真の葉を切り取ってきたおおもとの写真です。(B)よく見ると所々糸で葉がつづられていることが分かります。このような糸が内部にも数か所あって、葉が広がらないようになっています。(C)葉を広げると中にハマキムシがいました。
全体を見るときちんと1枚の葉になっていることが分かりますよね(D)。

ハマキムシが巻いた葉を広げてみる
ハマキムシが巻いた葉を広げてみた写真

芙蓉の挿し木にチャレンジ!

さて、いよいよ本題の挿し木についてなのですが(前段が長すぎるというお怒りは許してもらって)、まづは今回芙蓉の挿し木をやろうと思った理由です。端的に言って「生えている場所が悪い!」というだけの理由なのです(;^_^A

じつはこの芙蓉、一段低い庭に行くための通路脇に生えているのですが、元々の通路(数段の石段)幅が狭いにもかかわらず、その反対側には蝋梅の木もあるため狭い通路がますます狭くなって人が通りにくいのです。

さらには芙蓉の木の下にはヒマラヤユキノシタが有るのですが芙蓉が邪魔でヒマラヤユキノシタにはほとんど日が当たらないような感じです。

移植しようにも石垣の隙間から生えてきた芙蓉のため、掘り上げることもできないという状況でした。

これまでは冬になる前の極力根元から剪定してしまって、樹を大きくしないようにしたり、枝葉が伸びてきたら人が通れるように枝を切ったりしていたのですが、せっかく綺麗な花を咲かせてくれる芙蓉ですからもっと伸び伸び育ててあげたいと思っていました。

そのような理由から、今回挿し木がうまくいったら広い場所に植え付けてあげようと思い挿し木にチャレンジしてみました。

刺し穂の準備

挿し木をしたのが5月15日と遅かったため、刺し穂は出来るだけ新しく伸びた枝を使ってみることにしました。下の写真は切り出してきた刺し穂です。

フヨウの刺し穂
フヨウの刺し穂

刺し穂は上の方の葉を数枚だけ残して後の葉は取り去りました。また残した葉もそれぞれ半分~1/3位に切り詰めて水の蒸散を抑えるようにしました。
下の切り口はカッターで斜めに切り水揚げしやすいようにしました。

フヨウの刺し穂
フヨウの刺し穂。上の歯を数枚だけ残す。

準備した刺し穂を水に2時間ほど挿して吸水させます。

刺し穂の水揚げ
刺し穂を2時間ほど水につけて吸水させる

給水が終わった刺し穂は土に植え付ける前に、カットした根元の部分に発根促進剤を付けました。発根促進剤も何種類か市販されていますが、私はルートンという商品を使っています。

刺し穂のカット部分に発根促進剤を付ける
刺し穂のカット部分に発根促進剤を付ける

今回培養土は「挿し木用の土」として売られている用土を使用しました。特に挿し木専用の培養土でなくとも、赤玉土(小粒)とか鹿沼土(小粒や細粒)でもできます。注意点としては養分(肥料など)の入っていない土を用いるようにすることです。

挿し木直後の刺し穂ですが、少し萎れてしまっていたので若干の不安がありました。しかもこの写真の翌日見た時は、すっかり萎れてクタ~~~ってなってしまっていたのですから「失敗したかも。。。」と半分諦めていました。

挿し木用の培養土に挿し穂を挿す
挿し木用の培養土に挿し穂を植える

数日間水を切らさないようにして、風通しの良いやや日陰で管理していたらクタ~~ってなっていた刺し穂がシャッキッ!となってくれたのでひと安心です。

水を切らさないように管理して1ヵ月ほど経過した芙蓉が下の写真です。結構元気で、新しい葉が出てきている刺し穂もありました。

挿し木から1ヵ月経過したフヨウ
挿し木から1ヵ月経過したフヨウ

ポットの底を見ると全てのポットで底の穴から根が出ていましたので、無事に発根もして根も充実しているようです。
一応挿し木としては成功!といえますね(^^♪

挿し木から1ヵ月経過したフヨウ。ポットの底から発根が認められる
挿し木から1ヵ月経過したフヨウ。ポットの底から発根が認められる。

挿し木としては6ポットやったのですが、地植えにはその中で大きく元気な苗で、底から伸びている根の量も多い3つを選びました。

地植えするためにポットから抜いた芙蓉です。根の張り具合に若干差は見られますがまぁ大丈夫でしょう!

植え付けのためポットから抜いたフヨウ
庭に植え付けるためポットから抜いたフヨウ

地植えする場所は日当たりが良くて、周りに樹などが無い場所を選びました。雑草だらけだった場所ですが、地植えのために極力雑草を除去して苗と苗の間を80㎝位あけて植えつけました。

実は植え付けるときはこの位の間隔で十分だろうと思っていたのですが、よくよく考えると植え付けた3つの苗が全部スクスク育ってくれたら・・・・狭すぎますよね(;^_^A
まぁ、その時はその時で「芙蓉の植え替えにチャレンジ!」という記事を書きますね(笑)。

庭に植え付けたフヨウ
間隔をあけて庭に植え付けたフヨウ

地植えしたのは2020年6月15日なので、ここ(北関東)はもう梅雨入りした後でした。この年の梅雨は雨が続いて「梅雨の晴れ間」もほとんど無く、例年に比べて梅雨明けも遅い年でした。参考までに関東地方の2020年の梅雨入りは6月11日頃で梅雨明けは8月1日ころでした。

雨ばかりだったので植え付けた芙蓉の様子も心配だったのですが、元気に成長してくれました。下の写真は7月25日の地植えした芙蓉の様子です。

植え付けから40日ほど経過したフヨウ
植え付けからおよそ40日経過したフヨウ

初めて芙蓉の挿し木をやってみましたが、割と成功しやすいような感触を受けました。今後の成長過程も追記していきたいと思います!

芙蓉の挿し木その後

8月8日現在、挿し木で増やしや芙蓉はフタトガリアオイガに食い荒らされています(;^_^A
ほぼ毎日幼虫を捕獲しては捨て、捕獲しては捨て、をやっているのですが、穴ぼこだらけの葉を見ると・・・・ちょっと悲しい。

でも、全体的には元気で成長していますよ!

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